「巨大衝突説」では、月の海についての説明がないのが大きな弱点である。
いん石の衝突で海がつくられたという説があるが、なぜ月の表側に集中していん石が衝突するのか説明できないし、あの平坦で広大な海をつくることもできない。 |
アメリカの月探査機ルナープロペスターによる重力場の観測では、鉄を主成分とする月の核の大きさは全質量の約2%と小さかった。この事実は、巨大衝突によって飛びだした岩石質のマントルから月の大部分ができたという説を裏づける。
(Newton「太陽系全カタログ」より引用、左図とも) <作者評> この内部構造では、なるほど月の平均密度が3.341g/cm3をうまく説明できる。しかし、 1)なぜ地(月)震が1時間以上も長く続くのか 2)なぜ地球に向いた表側に海が多いのか 3)なぜ月はいつも同じ面を地球に向けているのか 4)地球のすぐ近くにできたのなら、潮汐力でもっとつぶれた球体になっていたはずである など、説明できないことも多い。 月の内部構造を正確に知るためには、地球の場合と同じように精度のいい地(月)震計を多く設置する必要がある。 |
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なぜ地球に向いた表側に海が多いか、その理由は作者が主張する「衝突捕獲説」によれば簡単である。
月は地球に衝突したショックで、月本体の自転エネルギーを失った。そして衝突したあとで宇宙空間に跳ね返って、地球の重力に捕らえられて、周りを公転するようになったとき、潮汐力によって月内部の重心が偏る表側を地球に向けるようになったのである。 いつも同じ面を地球に向けていれば、潮汐力で月内部の圧力が開放されて高温の熱エネルギーが発生する。この熱エネルギーによって表面の岩石が溶けて、平坦で広大な海がつくられたのである。 地球に向いた面の地殻もこのときの熱エネルギーによって溶かされて、裏側に比べて40〜50kmも薄い層の地殻となったのである。 アメリカのアポロ探査によると、月の海の部分をつくっている岩石は、地球上の玄武岩に似た黒っぽい火成岩で、鉄やマグネシウムなどの元素に富むものであった。明るい色の陸地(山地)は、主にアルミニウムやカルシウムの多い斜長岩とよばれる岩石でつくられている。 陸地(山地)の岩石はおよそ41億年くらい前までのものが多かったのに対して、海をつくる岩石は38億年から32億年くらい前のあいだに冷え固まったものといわれているので、月が地球に衝突して捕獲されたのは38億年くらい前のことと思われる。
今の月をつくった熱エネルギーは
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