H 月の円軌道の謎を解く
    
月が地球の周りを回る軌道は、正確にはコンパスで描くような真円ではなく、わずかに近い楕円である。大きな天体の月が円軌道で回ることは長い間の謎であった。   
「巨大衝突説」で、火星ぐらいの大きな天体が地球に衝突して、破壊された一部の大きな破片が<核>となって、円軌道で回りながら周囲の岩石破片を集められるのかどうか、大きな疑問である。   
また、土星のように岩石破片の円形リングが凝集して、大きな天体の月ができるとはとうてい考えられない。
 
作者は「衝突捕獲説」を主張しているが、読者の指摘により、軌道について一部を修正する。
      
原始月が地球に衝突したときは、正の運動エネルギーが負の運動エネルギーに変わって、地球の重力に捕らえられて、周りを回るようになるが、衝突したところが近地点になる長い楕円軌道を描いてしまうので、今のような円軌道にならない。
       
地球上から打ち上げた人工衛星は、制御エンジンの働きで円軌道になるが、月にはそのような働きができない。
 
月の円軌道はこうしてできた  

 
月が地球に衝突する瞬間は、いん石と同じく秒速
10キロ前後であるが、月の直径(3476キロ)分接近
するのに5分48秒前後かかるから、宇宙から見ると
きわめて超スローモーションになる。

丸いボールにヒモをつけて、空中に回すと円軌道になる。   
同じように、月が円軌道で回るためには、まず地球との距離が固定されていなければならない。
     
つまり、月が地球に衝突してから互いにくっついたまま、ぐるぐる回っていたことが考えられる。地球に衝突したとき、月の質量が大きいうえに当時の地殻の厚さが裏側と同じく100〜150キロと大変に厚かったので、衝突のエネルギーを吸収して、月と地球がくっついたわけである。
     
そのとき月が地球表面において円軌道で回るための速度は秒速7.91キロである。地球の1周(赤道)は約4万キロだから、1日の自転は1時間半ぐらいと猛烈に速かったことになる。 
そして、月の潮汐力で地球の自転がおそくなると「角運動量保存の法則」と遠心力で、月がゆっくりと地球から離れていったのであろう。
 
火星に巨大衛星があった?  

 
火星衛星のフォボスとダイモス
(現代天文学小事典より)  

火星には、いびつな形をした2つの衛星フォボスとダイモスがある。フォボスは、さしわたしが27×21×19キロのラグビーボールのような形をしており、火星から約6000キロ離れた軌道を約8時間で公転する。ダイモスは15×12×11キロの楕円体で、火星から約2万キロ離れた軌道を約30時間で公転する。 
(Newton「太陽系全カタログ」より)
      
この2つの小さな衛星はいずれも火星の赤道上をほぼ円軌道で回っている。小惑星によく似ているが、外から飛び込んで捕獲されることは不可能である。
     
上記の月の場合と同じように、大きくて密度が小さく軽い天体が火星に衝突して、周りを回る途中で火星の潮汐力に耐え切れずに破壊された。破片のほとんどは宇宙空間に飛散したり、火星に落下したりして消滅したが、2個だけが例外的に残ったものと思われる。
     
衛星の表面にはそのような痕跡がみられるし、火星の活発な火山活動と驚異的な地形は、かつて巨大衛星の影響があったことを思わせる。
 
ロッシュ限界 
流動物体が潮汐力によって引き裂かれずに, その主星を軌道回転できる最も近い距離。固体物体の場合は, ロッシュ限界内でも潮汐力がその物体の構造強度を越えない限りは引き裂かれずに生き残ります。
ロッシュ限界 は次の式により計算できます。
RL = 2.456*R*(p'/p)^(1/3) 
ここで p' は惑星の密度で pは衛星の密度です。そしてR は惑星の半径です。
(ビル・アーネットのサイトより引用)

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