月には全球的な磁場はない。しかし、アポロ計画の探査で、表面の岩石の一部は残留磁気を示していた。月の歴史の初期には全球的な磁場があったのかもしれない。では、なぜ磁場は消えたのであろうか、その謎を解くカギは内部構造にある。 |
地球の磁場は「ダイナモ理論」で説明されていて、地球は大きな電磁石といわれている。電磁石のまわりに磁場ができるのである。
地球の内部にある外核は液状の鉄で、鉄の原子が活発に動き回って強い電流を発生させる。そこへ自転による回転が加わるため核全体がダイナモ(発電機)になり、電磁石を作り出すと推察されている。(図解雑学「地球のしくみ」より) 月の内部にはS波(よこ波)が伝わらない部分があり、液状の核があると考えられている。すると、月もおそいとはいえ自転しているのだから、ダイナモが働いて磁場があっていいはずである。 実際、自転がおそい水星に弱い磁場が観測されており、同じように自転がおそくて小さい木星の衛星イオに強い磁場が観測されている。 |
左図は、(4)の「地球と月の内部構造」で取り上げた、月の内部構造であるが、地球の内部構造との大きな違いは、中心の内核(固体)がないことである。
これはあくまで想像であって、固体の鉄・ニッケルからなる中心核があると主張する研究者もいるかもしれない。また、(8)で取り上げたように、アメリカの月探査機ルナープロペスターによる重力場の観測では、鉄を主成分とする月の核の大きさは全質量の約2%と小さかったと主張する研究者もいるだろう。 (その核が固体なのか液体なのかは不明) しかし、どの主張も、月は初期において磁場があったが、その後何らかの原因で磁場が消えたことを説明できないのである。 もしかしたら、磁場をつくり出しているのは、液体の核ではなくて、中心の固体核が永久磁石の働きをしているためではないだろうか。永久磁石は高温になると磁場を失うから想像以上に低温かもしれないし、あるいはもっと複雑な発電機構が働いているかもしれない。 つまり、月は初期において、磁場をつくり出す固体核をもっていたが、その後ゆっくり小さくなって消えてしまい、磁場も消えてしまったものと思われる。 消えたものはどうしたのか、高温の熱で液体の核に変わったのであろうか。しかし、なぜ中心の高圧で液体に変われるのかよくわからない。 |