月からの隕石に証拠  
地球形成後の重爆撃期

生命起源研究に貢献期待、東北大など発見

 地球と月は約46億年前に形成された後、40億〜38億年前に大量の隕石が降り注ぐ「重爆撃期」があったと考えられているが、月から飛来した隕石で初めて、この重爆撃の衝突を受けた証拠の鉱物が発見された。東北大と茨城大、東大、千葉工業大の研究チームが最新の国産分析装置を使って突き止め、29日までに米科学アカデミー紀要電子版に発表した。

 重爆撃の証拠は、地球の地表では大陸の生成・消滅や風化で失われたが、月面ではクレーターとして残っている。重爆撃期の隕石に含まれていた有機物が生命の起源との学説もあり、東北大の大谷栄治教授は「米アポロ宇宙船が月面から回収した石を調べ直す必要がある。今後の月面探査でも高圧鉱物を探し、重爆撃現象を解明することが重要だ」と話している。

 分析した隕石は、南極・あすか基地近くで1988年に観測隊によって採集された。玄武岩質だが、一部が衝撃で融解してガラスとなっている。放射性同位元素による年代測定では、38億7千万年前
に月面でマグマから結晶化した後、38億年前に重爆撃期の隕石衝突を受けて一部がガラス化。100万年前に別の隕石衝突により月面から飛び出し、宇宙線にさらされた後、地球に飛来したとみられる。

 このガラス部分を半導体研究に使われる微細加工・分析装置を駆使して調べたところ、シリカ(二酸化ケイ素)の結晶構造が高温高圧で変わったコーサイト、スティショバイト、石英が見つかった。これら鉱物の存在は、重爆撃期の隕石衝突で1千〜2千度、8万〜30万気圧になったことを示すという。 



地球と月は約46億年前の形成後、大量の隕石が降り注ぐ「重爆撃期」があったと考えられている
(上、想像図)が、月から飛来した隕石で重爆撃の衝突を受けた証拠の鉱物が発見された(下、隕石
の断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真)。東北大などの研究チームが突き止め、発表した。
(上下とも大谷栄治東北大教授提供)

<平成22年12月30日付、北國新聞>

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