国際天文連合
太陽系12惑星に  セレス・カロン・2003UB313

 【プラハ16日時事】太陽系の外周で冥王星より大きい新天体が発見されたことを受け、惑星の定義を検討してきた国際天文学連合(IAU)は16日、当地で開催中の総会で、「太陽(恒星)を周回する自己重力で球形の天体」との案を発表した。これによると、新天体のほか、従来は冥王星の衛星とされた二重惑星「カロン」、火星と木星の間の小惑星帯にある「セレス」が新たに惑星となり、惑星数は現在の9個から12個に増える。



新たな定義による太陽系の惑星。左端の太陽から順に水星、金星、地球、
火星、セレス、木星、土星、天王星、海王星、冥王星と力口ン、2003UB313
(国際天文学連合/マーティン・コーンメッサー氏提供)

3個昇格を提案   「自己重力で球形」と定義

 IAUは天文学の最高機関。24日の採決で承認されれば、1930年の冥王星発見以来、76年ぶりに太陽系の姿が書き換えられる。しかし、第5惑星となるセレスは直径が月の約4分の1しかない上、今後さらに12個の天体が惑星に昇格する可能性があるとしており、議論になるとみられる。
 この問題は、昨年7月、米カリフォルニア工科大のマイケル・ブラウン教授らが、太陽系外周の小惑星群「エッジワース・カイパーベルト」の中で、冥王星より大きい新天体(仮称2003UB313)を発見し、「第10惑星」と発表したことが直接のきっかけ。
 直径が月の7割しかない冥王星も、以前から科学的には同小惑星群の1つとされており、第10惑星を認めるか、冥王星を小惑星に格下げするかの議論が高まった。
 しかし、IAUは1999年2月、歴史的経緯を踏まえて冥王星の格下げはしないと宣言済み。惑星は太陽の周りを円盤状に取り巻くちりやガスが集合・衝突を繰り返して形成されたと考えられることから、「自己の重力で球形となっている」との定義案が浮上した。この案では直径800キロ以上などが目安となり、3天体が新惑星とされた。
「小惑星」を廃止
彗星含め「太陽系小天体」

 IAUは社会的影響を考慮し、水星から海王星までの8個を「古典的惑星」、冥王星とカロン、UB313の3個を「プルートン(冥王星族)」と分類。セレスは「矮惑星」と呼ぶことにした。また、「小惑星」の呼称を廃止し、惑星より小さい天体は彗星などを含め、「太陽系小天体」と呼ぶことを提案した。

「水金地火木土天海冥」変わる?
教育現場--歓迎「生徒の関心高まる」と懸念「9個の方が混乱せず」

 水金地火木土天海冥−。子供のころから慣れ親しんできた太陽系の姿が書き換えられるかもしれない。星空の中で不思議な動きをする惑星は古くから人々の注目を集め、世界中の文化や宗教にも影響を与えた。新たな惑星の「出現」はどんな波紋を呼ぶのか。
 「教育現場としては、9個に収まった方が混乱せず楽」と話すのは開成学園地学科教諭の石川勝也さん。教科書の執筆経験もある石川さんは「既に衛星や彗星は教科書でも『〜個以上』と数を確定していないが、惑星もそうなりそうだ」と困惑する。「ここ数年、『第10惑星』候補の発見で生徒の関心は高まっている」と期待する一方、「教師が古い知識のままで教えたり、惑星の数を問うような意味のない問題が作られたりするかもしれない」と懸念も示す。
 一方、横浜こども科学館天文指導員の山田陽志郎さんは「惑星が増える方向で定義されるのであれば、『教科書にも載っていない惑星が増えた』と関心が高まっていい」と肯定的だ。
 村上陽一郎国際基督教大大学院教授(科学史)は「肉眼で見える惑星は、いろいろな文化圏で特別視されてきた」と話す。しかし、今回の定義付けによる惑星の「変化」には「歴史的、文化的になじみのある惑星の概念は大きく動くことはない」と冷静な見方だ。村上教授は「新しい知見が見つかれば修正されるのは科学の世界では当たり前」と指摘している。

<平成18年8月17日付、北国新聞>

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