太陽帆船を木星へ
「はやぶさ」の川口教授ら計画、来月合否決定

 探査機「はやぶさ」を開発・運用し、小惑星「イトカワ」への着陸を成功させた宇宙航空研究開発機構の川口淳一郎教授らが、太陽の光の粒子を大きな帆で受けて進む「ソーラーセール(太陽帆船)」探査機を開発し、日本で初めて木星に飛ばす計画を立案している。機構内には競合する天文衛星開発計画が他に2つあるが、2月の審査でゴーサインが出れば、2011年か12年の夏の打ち上げを目指す。
 新探査機は、木星や付近の小惑星群の近くを通りながら観測を行う親機と、途中で分離して木星を周回する子機で構成。木星への突入機を追加する案もある。
 本体には回転ドラムを設け、極めて薄い樹脂膜でできた直径約50メートルもの帆をゆっくり回して広げる。重力や空気がない宇宙空間でも、遠心力を利用すれば安定するためだ。内側3分の1は薄膜太陽電池とし、発電した電力ではやぶさと同じイオン噴射エンジンを動かす。



木星周回軌道で子機(左)を分離する「ソーラーセール(太陽帆船)探査機」の想像図。
太陽の光の粒子を受ける樹脂膜の帆は直径約50メートルで、内側部分は薄膜太陽電池。
川口淳一郎教授らは2011年か12年の打ち上げ計画を立案している
(宇宙航空研究開発機構・池下章裕氏提供)

ソーラーセール(太陽帆船)
 太陽から放出される光の粒子「光子」を大きな帆で受けて進む宇宙船。光子の圧力は微弱だが、長時間受け続けると速度が上がり、遠い惑星まで飛べる。1910年代末にロシアの科学者ツィオルコフスキーらが提唱し、近年、薄くて強い樹脂膜が実用化されて実現性が高まった。米惑星協会が開発した世界初の太陽帆船は昨年6月、打ち上げに失敗した。

<平成18年1月4日付、北国新聞>

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