NASA彗星の核に衝突体命中
探査機ディープインパクト、
太陽系起源解明へ一歩

 【ワシントン4日共同=吉本明美」米航空宇宙局(NASA)は米東部夏時間の4日午前1時52分(日本時間同日午後2時52分)、太陽を周回するテンペル第一彗星の固体部分(核)に、無人探査機「ディープインパクト」から放出した直径約1メートルの銅製の衝突体を命中させることに成功した。
 彗星内部には約46億年前に太陽系ができた当時の物質が閉じ込められているといわれる。飛び散った物質には、地上にある世界中の天文台も一斉に望遠鏡を向けており、太陽系の起源解明に大きく貢献しそうだ。NASAは予想を上回る大成功としている。
 衝突の決定的瞬間の画像を、500キロ以上離れた探査機本体が撮影し、数分後に地球に送信してきた。画像は、霧状に飛び散った物質が太陽光で白く輝く様子をとらえており、TNT火薬約5トン分の爆発に相当する衝突の衝撃で彗星の表面が割れ、内部の成分が噴出したとみられる。
 衝突体はほぼ円筒形で直径1メートル、長さ1メートル、重さ約370キロ。前日に本体から分離され、軌道を自動修正しながら秒速約10キロの高速で突っ込んだ。突入約3秒前まで、彗星表面を詳細に撮影した画像も送信した。
 標的となった彗星は地球から約1億3400万キロのかなた、火星の軌道付近に位置している。米独立記念日に衝突のタイミングを合わせたミッションだったが、固体部分が直径約4・6キロ、長さ約14キロと推定されるだけで詳しい形態は事前に分かっておらず、NASAは「大きな困難を伴う」としていた。
 衝突の数分後、探査機からの信号と画像で命中が確認されると、緊張に包まれていたNASAジェット推進研究所(カリフォルニア州パサデナ)の管制室には大歓声が上がり、職員らが抱き合って成功を喜び合った。
ディープインパクト
 彗星(すいせい)の核に銅の衝突体を撃ち込んで人工的にクレーターをつくり、蒸発する内部の構成成分や表面の構造などを至近距離から直接観測する、米航空宇宙局(NASA)による前例のない宇宙実験。探査機は2005年1月に打ち上げられ、費用は約3億3千万ドル(約370億円)。宇宙からの観測のほか、日本を含む約20カ国、60以上の地球上の天文台、世界のアマチュア天文家も観測に協力した。



探査機ディープインパクトが放出した銅製の衝突体が
彗星核に命中、閃光(せんこう)を放った瞬間。
探査機本体がとらえた(NASA提供・共同)


ポール・エアロスペース&テクノロジー社が発表した、
テンペル第1彗星に無人探査機「ディープインパクト」から放出された
衝突体が命中する様子を描いた想像図(ロイター=共同)

<平成17年7月5日付、北国新聞>

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