タイタン土星衛星に探査機着陸
原始地球と類似、本格調査

 【マイアミ(米フロリダ州)14日共同】土星を周回中の米欧の無人探査機カッシーニから昨年末に放出された欧州宇宙機関(ESA)の小型探査機ホイヘンスが、米東部時間14日午前7時45分(日本時間間午後9時45分)すぎ、土星最大の衛星タイタンに着陸した。

 探査機のタイタン着陸は初めてで、カッシーニによる一連の土星探査は、大きな収穫を得ることになる。
 生命が誕生する以前の原始地球と環境が似ているとされるタイタンには、世界中の天文学者が注目していたが、これまでは分厚い大気の層に観測を阻まれてきた。ホイヘンスは着陸後もデータを送り続けているといい、14日午後(同15日朝)には貴重な観測結果が地球に届く。
 ホイヘンスは直径約2・7メートル、重さ約320キロとミニサイズの円盤型探査機。タイタンの上空約1300キロで大気圏に入った後、パラシュートで減速しながら着陸までの約2時間半、大気を採取して成分を調べるほか、搭載したカメラで衛星表面を撮影。
 気温や気圧、風の強さや音などさまざまなデータも集め、母船のカッシーニ経由で地球に送信。搭載された各種装置は非常に順調に作動。最長でも30分程度とみられていた着陸後の観測は1時間以上に及んだという。
 カッシーニは1997年に米航空宇宙局(NASA)、ESA、イタリア宇宙局が計約33億ドル(約3400億円)をかけて共同で打ち上げ、昨年6月末に土星の周回軌道に入った。タイタンにはその後二度にわたって接近したが、表面の詳細はつかめなかった。

【タイタン】 1655年にオランダの物理学者ホイヘンスが発見した土星最大の衛星。直径約5150キロで、水星、冥王星より大きい。太陽系の衛星の中で唯一、分厚い大気を持つ。大気の濃さは地球の1・5倍。太陽から遠いため、表面温度は零下179度。
 

  
 
土星最大の衛星タイタンに着陸した小型探査機ホイヘンスの模型(AP=共同)
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科学者、生命の起源探し手掛かりに期待
 
 表面温度が零下179度と極寒のタイタンに、現時点で生命体が存在する可能性は非常に低い。ただ、大気に窒素が多いことや、メタンなどの有機物が豊富にあることなど、地球との共通点も多い。科学者らはタイタンに存在する有機物を詳しく調べれば、地球生命の起源探しの手掛かりが得られる可能性があると期待を寄せている。
 地球の生命は、海に溶け込んださまざまな有機物が、落雷などのエネルギーによって複雑な化合物に変わったのがきっかけで誕生したと考える科学者が多い。
 タイタンの大気に含まれるメタンの供給源となっている候補のーつと考えられるのが「メタンの海」。海があれば、原始地球と同様「有機物のスープ」かもしれず、成分を調べれば、生命へとつながり得る化合物を特定できる可能性が出てくる。このため、過去に地上から行われた観測でも、海が存在するかどうかの解明に力が注がれた。だが結局はっきりせず、ホイヘンスの観測に大きな関心が集まっている。
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<平成17年1月15日付、北国新聞>
 
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