年末から年明けにかけ、火星は地球からの”訪問客”を相次いで迎える。約半年をかけ、4億キロを超える旅をしてきた欧州宇宙機関(ESA)と米航空宇宙局(NASA)の探査機3機が降り立とうとしているからだ。

火星探査ラッシュへ
欧米3機、生命の痕跡を探る
同時活動、新発見に期待

 かつては地球と似た環境だったと考えられる火星で岩石や大気を調べ、水や生命の痕跡を探る任務を持つ。米ソが過去に試みた火星着陸は3分の2が失敗。日本の「のぞみ」もあえなく探査を断念した。今回、3機とも着陸に成功、同時に活動できれば史上初の快挙。豊富なデータが届く来年には、あっと驚く新発見が期待できそうだ。
 
「もぐら」で採取
 
 まず到着するのがESA初の火星探査機マーズエクスプレス。着陸機ビーグル2を分離し、25日にパラシュートとエアバッグを使い、赤道近くに着陸させる計画だ。
 ビーグル2は直径64センチの円盤型。太陽電池パネルを開き、ロボットアームや地中に潜り込む「もぐら」と呼ばれる装置で大気や岩石を採取、生物が作った炭素やメタンなどを探す。
 さながら「1ヶ所にテントを張り生命の起源を探る生物学者」といった風情だ。
 母船も火星の周回軌道に乗り、ビーグル2からのデータを地球に中継しながら、地中の水脈や大気の様子などを探る。

ロボット学者

 一方、NASAのマーズ・エクスプロレーション・ローバーは、地表を縦横無尽に走り回るキャラバン部隊だ。スピリットとオポチュニティーの双子探査車で構成。「ロボット地質学者」との別名もある。
 日本時間の1月4日と同25日に、それぞれ、かつては湖だったとみられるクレーターと、そことは火星の反対側に位置する平原地帯に着陸する。
 ゴルフカート大の六輪車両で、重さ約180キロ。7種類の観測機器を搭載し、1997年に着陸したマーズパスファインダーの探査車の6〜10倍の機動力を備える。
 地上1.5メートルから高精細の立体パノラマ写真を撮影。堆積岩など水と関係が深い岩石を探して採取、表面を削って内部の化学組成を分析する。活動は3ヶ月間の予定だ。
 今回の探査ラッシュは、6万年ぶりに地球と火星が大接近したのが一つの要因。だがもっと重要なのは、ここ数年の火星研究の成果だ。
 70年代までの探査では、水も生命も存在しない「不毛の地」との印象が強かった火星だが、90年代後半、北極や南極の地中深くに大量の水が隠れていることが判明。太古の昔は地球のように温暖だったらしく、洪水や河川の跡とみられる地形も見つかった。
 ESAの研究者は「そうした環境ならバクテリアのような微生物が進化しても不思議はない」と、ビーグル2から届く生命の痕跡発見の知らせに期待を寄せる。
 NASAは99年に火星の南極で生命を探るマーズ・ポーラー・ランダーの着陸に失敗。今回はその雪辱に加え、将来の探査予算獲得の狙いもある。2005年から段階的に探査技術を高め、14年以降に「火星の石」を地球に持ち帰る目標を掲げている。
        

  
米航空宇宙局(NASA)の火星探査車、マーズ・エクスプロレーション・ローバー。
スピリットとオポチュニティーと名付けられた2台が地質データを探る(NASA提供)
  
<平成15年12月21日付、北国新聞>
        
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